2005年7月27日水曜日

SSその3

これもそう。お世話になってるTRPG遊戯会さんで上げたもの。
前の二つはキャラ固め用として。
これは純粋にこういう事だったのか、とキャラが固まった後で書いたもの。



『きっかけ』


 それは、ある日突然訪れた。


 俺、ローズ。
親父が人間でお袋がエルフの典型的(?)なハーフエルフ。
親父は…一言で言やァ熊親父で、ゴツくてデカい。ついでにムサい。
かなりの歳なのかそろそろ白髪の方が多くなってる。
お袋は、はっきりいって若い。
エルフ種なんだから若いのは当たり前なンだけど…若い。若いっつぅよりもう幼い、っつった方が的確な位。
それでも息子の俺から見ても、両親は万年新婚夫婦っつぅか。
まァ兎に角年中いちゃいちゃしてるっつぅか…。
仲が良いのは間違いナイからそれはそれでイイのかもナ?と思ってた。
その日までは。


 ある日の朝食。
何時ものように椅子に座って、何時ものようにパンとスープを並べる。
何時ものように親父はもう農園の手入れに出かけてて、食卓には俺とお袋の2人きり。
「ローズ、あなた幾つだった?」
いい加減息子の歳位覚えてもらいたいモンだけど、お袋の頭ン中はいつも親父でいっぱいだし。
仕方がない、と諦めてる。
「17だヨ。」
もごもご、とパンを口に押し込みながら答える。
親父には行儀が悪い、と怒られるケド…口にモノを入れて喋るのはもう癖になってる。
「そう。あのね、コレウスと話したのだけど彼もうかなりの歳だから。それで…」
コレウスってのは親父の名前だ。
パンで口の中が乾いたのでスープを啜る。
スプーンで掬うのが面倒ンなって皿を持ち上げて直接口をつける。
これも親父に行儀が悪いってェ怒られるンだけど…鬼の居ぬ間のなんとやら。
…ちょっと用法違うか?
「2人っきりで彼が最期の日を迎えるまで過ごしたいから、独り立ちして頂戴。」
お袋の言葉に、思わず……咽た。
「…ッゲホ……ぇ?何?…??」
咽ながら聞き返す俺が見えてンのか見えてないのか。
「もう必要な荷造りはしてあるの。困らないように当座の小銭も入れておいたから、大丈夫ね?」
棚からゴソゴソと背負い袋を引っ張り出して…咽て涙目になってる俺に押し付けた。
「…ま、え?…ちょ……。」
状況を理解できない…いや、あれは理解できないンじゃなくて、したくなかったノかナ。
マトモに言葉も紡げない状態でいる俺をお袋はぐいぐいと外に引っ張って…情けねェけど俺ってお袋に担がれる位チビなんだよナ…パタン、と軽い音を立てて俺の前で扉が閉じた。
呆然と玄関前で立ち尽くす。
遠くの方で、多分農園にいるであろう親父が働いている音が聞こえる。
風が、樹木を揺らす音が届いて…なんだか無性に腹が立った。
「………バカヤローッ!!」
叫んでみたら少しスッキリするかと思ったケド……腹が立つのを通り越して、虚しくなった。


 ただ突っ立ってても扉が開くわけじゃなし。
仕方がナイから街に向かって歩き出す。
俺の家って「ココはドコの山奥だ!?」ってェ場所にあるから…辿り着くまでで一苦労だ。
正直、辿り着かねェンじゃないかとも思ったけど…ヘトヘトになった頃に街の、人工的な灯りが見えた。
適当な…安そうな宿にとりあえず泊まる。
ベッドでゴロゴロとしながら先を考える。
家を追ン出されたからには自分で食い扶持を稼がなきゃいけない。
…といっても、俺って家の手伝いをちょこちょこやってた位で手に職なンざ持ってねェし。
そもそも家の敷地の外に出ンの自体コレが初めてで…って俺よく街まで着けたナ。
外の世界のコト、ぜんぜん知らない…からマズ宿の親父に地図が見れる場所を教えてもらった。
教わった図書館ってェ場所はそれこそ山ほど本があった。
この時ばかりは人間種が使う共通語覚えておいて良かった、と本気で思ったナ。
世界地図も初めて見た。
「……こん、なに。広いンだ。」
地図だけじゃなく、国や街の解説も見つけたから一緒に読む。
人間至上主義…はちょっと勘弁だナ。俺半分人間じゃねェし。
軍事国家…ちょっとコレもヤだなァ。物騒なの苦手だシ。
聖王都…神サンのコトはよく解ンねェや。
俺農業は解っても…放牧って解ンねェから…ココもパス。
魔法都市…難しいコトいっぱいやってそう…コレもパス。
ココ、はナンか政治安定してなさそだし、居心地悪そうだから、パス。
そして、目に止まったのが。
「へぇ、百万の民…商都……賑やかそぅだナ。それに、国も安定してそぅダし。」


 方針が決まりゃ、行動は早い。
行ってどうなるモンじゃないとは思うケド…。
でも、何もしないでいちゃあ始まらない。
それに、人が大勢いる場所にゃ…なにかしら、あると思うシ。」
歩いて、時には馬車の荷台に乗っけてもらって。
こういう時は実際の年齢以上にガキに見える外見が都合イイ。
大概の大人…いや、俺も中身はともかくイレモンはもう大人なんだケド…は俺が頼むと大抵気の毒に思うのか乗っけてくれたからナ。
どの位移動に掛かったンだろうなァ?自分でも良く覚えてねェや。
ただ、着いた頃には歳が1コ増えてたナ。
来たはイイけど、ホント何してイイんだかサッパリ解ンねェし。
そもそもどんな仕事があンのかも知らねェって問題ありすぎな気ィするシ。
こんなでっかい街で野宿も悲しいから、財布に余裕があるウチに宿を取る。
どこがイイかナ…。太陽のナントカと、銀の月…?
月、月か。コッチにしよ。うん。
荷物を担ぎなおして、俺は『銀の月灯り亭』の扉を開けた。


 ………因みに、この時点で俺は、冒険者っつぅモンの存在すら知らなかった、と言っておく。


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