2010年3月25日木曜日

『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』 読了

 読み終わった第一の感想。
ギリシアの技術力、すごいよ。
 …いや、今現在じゃないですけど。

ヘレニズム期、知の分野でヨーロッパ最高だったのはギリシアだ、と断言して良いと思っている。
今までギリシアというのは数学もその他の自然科学も哲学よりで、建築物は美術品よりであり、現代でいうところの「技術分野」は発達していなかったと思っていた。

 ところが、どうだ。
アンティキテラの機械、と呼ばれるわずか20cmにも満たない青銅製の道具は確認されているだけで30からなる精巧な歯車から構成されており、太陽・月・そして惑星の位置を日付ごとに再現できるどころか日食・月食まで計算できたというではないか。
手回し式であるため時を刻みはしないが…つまり、天球儀だ。

 精巧な歯車はルネッサンス期のヨーロッパが起源だと言われていたものを覆し、歴史を1000年遡らせた。
今現在でもこの小さな機械はアテネの博物館に展示されているそうだ。
 …たぶん、私は実物をみても感慨はないだろうが、復元模型が寄贈される予定だとあったので、そちらには興味がある。
どう動くのか、見てみたいではないか。

 紀元前のギリシアでは知(と美)が重要視されていた、というイメージはこの本を読んだ後でも変わっていない。
ただ、そこに、彼らにとって技術とは高度な知性(たとえば…神)の領域へ近づくための手段であったのだ、という認識が加わった。
他者より優位に立つための、知のプレゼンテーションとしての技術。
彼らにとっては実用品ではなかったかもしれないが、現代からすれば天球儀は実用品だ。

 ヘレニズム時代に作られた青銅製品は後世ほとんどが鋳溶かされてしまったという。
アンティキテラの機械も小さいが青銅製のため、陸にあればその運命を辿っただろう。
 だが、幸いにもー当時その船に乗っていた人には不幸でしかないがーこの小さな機械は船とともに海底に沈んでいた。
その沈没船から、ろくに発達していない黎明期の潜水具だけを頼りに海綿漁師が引き揚げたのだ…祖国の栄光のために。
 この小さな機械は、古代ギリシアは知だけではなく技術力も当時の世界最高峰であったことを示しているように思える。
そこで最初にあげた感想に続くのだ。

 ギリシアの技術力、すごいよ。


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