2010年3月19日金曜日

No title

 いやぁ…ボリュームがあった。
文庫だと思って侮ってかかったのだが、1/4も読み進めない内に認識を改めることになった。

 この本は「今宇宙にある原子は何故存在するか?」についての本。
太陽が核融合で光を発していることについては様々な本に記載があるが、核融合とは?トンネル効果って?そもそもなぜ核融合してると分かったの?ということまで記載が及んでいる宇宙関連の書籍ははじめて手にしたと思う。
 扱われている範囲は天文学のみならず量子論、核物理学、etc..と少しづつではあるが多岐にわたっている。
誰が、いつ、どの分野で原子の由来についてどんな考察をしたのか?
非常に分かりやすくまとまっていると思う。
 今回の一番の収穫はホイルの業績について知ることができたことだろうか。
宇宙関係のほかの本では彼が宇宙物理学の巨人であり、そして定常宇宙説の先陣をきっていた人物であることは記載があるのだが、なぜ彼が宇宙物理学の巨人なのかについては記載がされていないことが多い。
(ガモフの論敵、とかビッグ・バンの名付け親とかしか言及されないことも多い)

 彼は、すごい。
誰もが嫌う人間原理を大上段にかまえた予測をぶちたてて、そして成功したただ一人の人物であることよりも、宗教の臭いが常につきまとう人間原理を彼は宗教的に見ていないということが。
ほとんどの科学者が逃げだ、として嫌う人間原理を根拠とした予測をひっさげて研究所におもむき、自分の名声を地に落とすことを覚悟の上で実験を要求したことが。
 そして、自らの主張にとどめを刺すかもしれない論文に対して「理論上正しい」と援護する行動をとれることが。

著者がホイルのファンだからかもしれないが、この本に出てくるホイルは非常に人間くさくて魅力的だ。
彼が先陣にたっていた定常宇宙説はいまは退けられてしまっているが、彼が原子のゆりかごは星の中にあるはずだ、という考えのもとに突き進んだおかげで重元素がなぜ存在するのかが現時点でわかっている。
 彼が予測しなくともいつかは誰かがたどり着いただろうが…。

この本はまさにタイトルの通り、今現在生命が存在しているのはすべて死んだ星星の破片の恩恵である…という内容だ。
科学本ではあるが、十分に娯楽要素があると思う。


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2 件のコメント:

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    >科学本ではあるが、十分に娯楽要素があると思う。
     科学本で娯楽要素があり、しかも「岩波から出ている」というとんでもない本が「ファインマン物理学」なんですが……学生時代に値段を見て溜息をついてました。
     学生生協の本屋さんで、売れない所為もあって手垢がついてどんどん汚れていくというw
     みんな手にとって読んでみては、値段を見て溜息つきながら戻してるのが良く判ります。
     「ご冗談でしょう、ファインマンさん」もとっても面白かったですw

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  2. SECRET: 0
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    ロスアラモスに集められた世界最高の頭脳の一つだったような。
    確か量子論の人で、とっても分かりやすい(?)ダイヤグラムの人だったような・・
    > 「ファインマン物理学」
    …一冊じゃないですよ!?
    しかも結構な値段だ!!
    これは…どんどん黒くなっていくのも分かります(笑)
    > 「ご冗談でしょう、ファインマンさん」
    面白そうですねー。
    「困ります?」というのもあるのですね。
    …確か、ファイマンって経路総和とか言いだした人だった気も…それは困る(笑)
    機会を見て読んでみますね!
    ありがとうございますm(_ _)m

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