2009年12月11日金曜日

素数に憑かれた人たち読了

 通勤時間を利用して読んでいた「素数に憑かれた人たち」読了。
フェルマー予想が証明されたので次は!と意気が上がっているリーマン予想の本。
リーマン予想はフェルマー予想と違って実務分野への影響も大きいので気になってはいるのだけれど、2002年段階の本なのでその後どうなったか分かっていないけれどもおそらく進捗はないんだろう。
「素数の音楽」にも書いてあったけれども、分かっていることは沢山あるが証明できることは少ない、というのが現状らしい。
 クレイ研究所や、あと世界中のPCの空き時間を使ってゼータ関数を延々計算して零点を見つけるプロジェクトなんかが着実にリーマン予想が真である証拠を積み上げてはいるけれども、証明の道筋はまだみつかっていないらしい。
次の零点が予想から外れない理由はいまのところ見つかっていないそうだ。

 なんでリーマン予想が実務分野に影響が大きいかというと、これが真だと桁数の大きな素数を計算で見つけることができるようになるから。
で。
現在、世界中で使われてる電子暗号鍵ってのは桁数の大きな素数をかけ算して作ってある。
暗号を解読するには素因数分解が必要だけれども、これにはどの数字が素数かわかっていないとできない。

 で。

桁数の大きな素数ってのはそのままだと見つけるのに時間がかかる。
ガウスは15歳の頃に「空いた15分」を使って1000ずつ区切って素数を書き出していたそうだが、現在体系的に素数を見つける方法ってのはガウスが使った方法と変わらない。
 のだけれど。
非常に計算が大変ではあるが、リーマンのゼータ関数の自明ではない零点は素数を導く…というのは略しすぎなんだけれど、兎に角桁数の大きな素数を見つけるツールになる!というのがリーマン予想。(ゼータ関数の自明ではない零点の実数分はすべて1/2である)

 これが真だと、お金かけてコンピュータ用意して延々演算させる価値が出てくる。
なぜなら世界中の電子暗号が破れるから。

現在そんなことをしているのは純粋な数学研究機関で純粋に数論の研究をしている個人及びそれに類するプロジェクト位。
スパコンを1日に5Hだか割り当てられているそうなんだが、それをフルにまわしても…まぁ進捗がはかばかしくない。
いや、順調に予想に合致するデータは出ているんだが。証明に結びつくデータが出てこないってだけで。

 リーマン予想については、もう少し弱い宣言なら真だ、ということが証明できそうな気配ではあるらしい。
が、それができてもリーマン予想を証明できたことにはならない。
リーマン予想が真であることを前提とした証明が数論の世界にはだいぶ積みあがったそうだが、リーマン予想が偽と証明されると崩れ去るそれらの問題はリーマン予想が証明されていないという問題に比べるとどうも扱いが小さいように感じる。
純粋数学の学者にとってリーマン予想は未登頂の山なんだそうだ。
フェルマー予想が証明されるまで300年以上。
リーマン予想はまだ150年。
「素数に憑かれた人たち」の著者は、現在の数学にはツールが足りないのではないか、と予想していた。
物理分野に一部ツールが散ってしまったのだか。
リーマンの時代は数学と物理がまだ分かれていなかったそうなので、予想の証明にはもう一度数学と物理のツールを統合する必要があるのではないか、と。

 他の本を読んでいて、あちこちに書いてあることを総合すると、数学と物理は同じ事を別な方法で解いているらしい。
文法が違う、というか言語が違うというか。
それを統合するって相当大変だよなぁ、と思うが…そこしか道がないならいずれ誰かがやるだろう。
それがいつになるのかは分からないけど。
著者は自分の時代にリーマン予想が証明されることはない率の方が高いだろうと言っていた。
たぶん、そうなんだろう。
ただ、こういうものはある日突然証明されたりする。
ポアンカレ予想みたいに。
そうなったとき、現時点では素数鍵に代わる電子暗号技術がないってことが、一番の問題になるんだろうなぁ。




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